皆さんこんにちは、院長の阿部です。
今日は発症率は10万人に1人と言われている、
網膜動脈閉塞症について書いていきたいと思います。
因みに当院も今年で15年目になりましたが、
上記疾患は今まで1度も治療経験が無く、
2022年末から2023年前半にかけて、
立て続けに網膜動脈閉塞症の方がお二人、
網膜静脈閉塞症の方がお一人来院され、
びっくりしたことを憶えています。
(2024年も網膜動脈閉塞症の方が
お一人来院)
また、その中で網膜静脈閉塞症の患者さんの大学病院の主治医が、
「上記の疾患(血管の閉塞で起こる眼科疾患)が最近異常に多い」という事と、
「原因はワクチンだろう」と言っていたそうです。
ただ、別の眼科の先生は、
網膜動脈閉塞症は軽い脱水症でも
起こりうる。と言っていますので、
実際の原因究明は
難しいのではないでしょうか?。
「網膜動脈閉塞症(RAO)とは?」
網膜動脈閉塞症とは網膜中心動脈かその分枝が血栓や塞栓により閉塞し、
網膜への血流が途絶え循環障害をきたす疾患。
それにより、急激な(片側性の)高度視力障害をおこす。
・発症後、1~2時間で血流再開しなければ、
網膜に不可逆性変化(改善不可能)が起こるため、
緊急の治療が必要。
・発症部位によって
網膜の中心動脈に発症する「網膜中心動脈閉塞症(CRAO)」
その分枝に発症する「網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)」
に分けられる。
「症状と好発」
・急激な視力低下(片眼性・無痛)や視野欠損(中心暗点)を自覚し、
網膜中心動脈閉塞症は主に急激な視力低下(0.1以下)、
網膜動脈分枝閉塞症は主に視野欠損がみられ、視力低下の症状は少数。
・眼底検査で「網膜の広範囲若しくは限局性の乳白色混濁、黄斑部の桜実紅斑、
動脈の狭細化などがみられる。
また、蛍光眼底造影で網膜動脈の循環時間の遅延がみられる。
・好発は高血圧や糖尿病、動脈硬化がみられる高齢者。
心臓弁膜症、内頚動脈狭窄症も。
ただし、若年者でも血管炎や抗リン脂質抗体症候群などが原因となって
発症する場合もある。
※当院に来院された方は30~40代で高齢者はいない。
「治療」
網膜動脈が完全に閉塞した場合、
1~2時間以内に血流を再開しないと
網膜に障害が残ると言われている。
よって、上記の急激な症状がみられた場合、
すぐに眼科へ受診、
時間帯によっては救急車を呼び、
その間に「眼球マッサージ」を5分から10分やってみる。
(目を閉じて上まぶたの上から、指で10秒~15秒間の眼球圧迫と解除を繰り返す)
もう一つは「ペーパーバック再呼吸」といって、
「紙袋を鼻と口に当て、呼気を吸い込む」
※二酸化炭素の多い空気をワザと吸い込ませて
血中の二酸化炭素分圧を上昇させ、網膜血管が拡張させるため。
どのくらいの時間やるかは調べきれませんでした💦。
・病院では「前房穿刺(ぜんぼうせんし)全房に注射針で穴をあけ眼圧を下げる」
「血管拡張薬」「血栓溶解薬」などが点滴・投薬される。
「予後」
・視力予後は一般的に不良。
但し、上記のように1~2時間以内に眼球マッサージを試みたり、
24時間以内に医療機関にて上記の治療を施せば、
治癒率が上がる。
また、3日以内に医療機関で適切な処置を受ければ
視力回復の可能性ありとの
記載もある。
「鍼灸治療と1症例報告」
・今回は30代男性の網膜動脈分枝閉塞症(網膜中心動脈閉塞症)だった方の
ご協力を得て、画像付きで報告する。
この方は約1年かけてほぼ治癒という
状態まで回復した稀な症例である。
また、両眼に発症された事も
極めてまれなケースである。
治癒した主な理由は、発症後2週後に
鍼灸治療を開始出来たことが、
最大のポイントだと思う。
(鍼灸治療の効果が有ったとすれば)
初診時の視力は「左0,05」「右0,1」。
(以後もすべて眼鏡ありの視力)
障害されている範囲は比較的小さいが
視野の中心部が障害されているため
視力が出ない。
初めの1か月間は週3回~2回、
その後の4か月間は週2回、
更に6か月間は週1回、
そして発症後約1年経過し、
今は2週間に1回の治療を
受けて頂いている。
経過としては、治療開始後2~3週間で
「右目の見え方が良くなっている」自覚され、
その後の発症後1か月の病院での画像診断でも
網膜の状態がかなり改善しているとのこと。
更に1か月半後の診察では0,9まで
視力が出る。(文字や数字はかけて見えたり、スマホは見ずらい。もやがかる感じもあり。)
その2週後の発症2か月後の画像診断では網膜の状態は1か月前と変わっていない(回復の変化は無い)と、
伝えられ少々がっかりする。
それでも発症後3か月後には両目とも1,2まで回復。
また、この頃ぐらいから自覚症状のモヤが薄くなってくるなど、
体感的にまだ回復する感覚はあった。
発症4か月後から針の刺入深度を上げて治療、刺激をやや上げる。
発症後6か月後のHPでの視力検査、画像診断でも、特に変化なし。
発症7か月後の視力検査では右眼1,2で変わらず、左眼は1,5と更に改善がみられた。
発症11か月後の視野検査では改善していると医師に伝えられる。
この頃には自覚症状のモヤもかなり薄く小さくなる。
車の運転も通常通りできるようになった。
発症6日後とその後約4か月後の
黄斑部?のOCT。
両眼とも網膜の回復がみられる。
㊧発症9日後の左目。㊨発症1年後、桜実紅斑?がほぼ消失した左目。
㊧発症9日後の右目。㊨発症1年後、桜実紅斑?がほぼ消失した右目。
フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)、
これも㊧が発症初期で㊨が発症して約1年経過後の画像。
丸の外枠に隙間が無くなっているのが良い状態らしい。
右目は特に良い状態に。
「まとめ」
とにかく、突然の視力低下時は、
救急車を呼んで良いという事。
その時に上記を参考にして
まぶたの上から、眼球指圧を
試してほしい。
押したときに、悪くない方の目と比べ
左右同じ感覚なら、
マッサージしても問題はなないと
思われる。
「鍼灸治療使用穴」
天柱・風池・YNSA耳鳴り①点、百会
下天柱・肩中兪・肝兪・脾兪・腎兪
太衝・三陰交・光明・合谷
攅竹・太陽・健明・球後
YNSAのN②点、目点など。